どうも。
2023年1月、岸田政権が「異次元の少子化対策」を掲げた頃、僕はそれに対して「本当にそこへお金を使うのが正しいのか?」と考え、一つの少子化対策案を書きました。
当時の僕が注目したのは、子どもが生まれた後の「子育て支援」だけではありません。
日本では未婚化・晩婚化が進み、そもそも子どもを産む女性の母数そのものが減っています。そこで、婚姻数を増やすという難しい問題だけに挑むのではなく、すでに結婚していて子どもを望んでいる夫婦の3人目を強力に支援したほうが、出生数を増やしやすいのではないかと考えました。
さらに翌月には里親制度について詳しく調べ、里親・養子縁組への支援を拡大し、経済的事情などから出産を断念しようとしている女性と、子どもを育てたい家庭を結びつけられないかという案まで発展させました。
それから3年以上が経過しました。
現在では、ひろゆき氏の「子ども1人1000万円」に近い大規模な子育て支援をシンガポールが打ち出し、イスラエルという出生率の高い先進国との比較もできます。そして僕自身も、シングルマザーへの集中支援、養育費の履行強化、家事・育児支援など、別の方向から少子化問題を考えるようになりました。
そこで今回は、2023年に書いた2本の記事を2026年のデータや研究と照らし合わせながら改めて検証します。
全員に1000万円を配るのではなく、「子どもは欲しい。しかし最後の障壁によって産めない」という人に少子化予算を集中したほうが、少ない予算で出生数を増やせるのではないか。
3年前の「究極の少子化対策案」はどこまで正しかったのか。そして、どこを修正すればもっと現実的な政策になるのかを考えていきます。
ここからはChatGPTに聞いた回答です。
2本を合わせて2026年時点で見ると、評価はかなりはっきりします。
「問題の所在を見抜く力は強かった。しかし、解決策としては“効きそうな部分”と“実際には難しい部分”がかなり混ざっていた」です。
まず、2023年当時のあなたの問題意識――「子育て支援だけでは足りない。そもそも結婚・出産する母数が減っている」――はかなり重要でした。
2021年の出生動向基本調査でも、18~34歳未婚女性の「いずれ結婚するつもり」は84.3%まで低下し、未婚化・晩婚化は出生減少と強く結びついています。2025年の出生数も67万1,236人、合計特殊出生率は1.14まで低下しました。
ただし、当時引用されていた「子育て支援は出生率に影響しない」という言い切りは、現在の研究から見ると強すぎます。
OECDの近年の分析では、育休、保育、家族給付はいずれも出生率と正の関係があり、特に保育・幼児教育への支出は比較的効果が強いとされています。一方、現金給付の効果は小さく一時的で、日本では児童手当より保育への支出のほうが出生率への効果が大きいという分析があります。
つまり、岸田政権の「子育て支援」は完全な的外れではありません。
ただし、
それだけでは人口構造そのものを逆転させるほど強くない
というあなたの指摘は、かなり残ります。
「既婚女性に3人目を産んでもらう」はどうか
ここは一部合理的です。
2015年調査では夫婦の完結出生児数は1.94人でした。 つまり、
結婚して子どもを持つ夫婦はある程度産む
という観察自体は正しい。
だから、
結婚する人を10万人増やす
政策と、
すでに2人いる夫婦に3人目を5万人増やしてもらう
政策を比べる発想自体は悪くありません。
ただし、問題があります。
3人目を持たない理由は所得税だけではありません。
住宅の広さ、教育費、母親の年齢、仕事への影響、育児時間などが複合しています。
実際、OECDも日本では希望する子ども数を実現できない理由として、教育・養育費が大きいと指摘しています。
したがって、
「3人目なら所得税大幅減税」
だけでは、それほど大きく出生数が増えない可能性が高い。
むしろ、
3人目なら住宅・保育・教育費・家事育児負担をまとめて大幅軽減
のほうが効きそうです。
そして一点修正すると、フランスのN分N乗方式、つまりquotient familialは、厳密には「個人課税」ではありません。
フランスでは夫婦・家族を一つの課税単位として所得を「家族の持分」で割って累進税率を適用します。第1・第2子は各0.5、3人目は1持分追加されます。つまり、むしろ家族単位課税に近い制度です。
また「フランスでN分N乗方式の出生効果が実証済み」と断言するのも少し危険です。
OECDはフランスの比較的高い出生率について、税制だけではなく、保育・育休・家族手当・住宅支援を長期間一貫して組み合わせた家族政策全体を評価しています。特に保育サービスが重要だとしています。
里親を「3人目」として扱う案
これは少子化政策として見ると、かなり整理が必要です。
里親を増やしても、
出生数そのものは増えません。
すでに生まれている子どもの養育環境を改善する政策だからです。
現在でも社会的養護の必要な子どもは多数存在し、2022年度調査では里親委託児童6,057人、ファミリーホーム1,713人に対し、児童養護施設には2万3,043人が入所しています。
ですから、
里親促進=優れた子ども福祉政策
ですが、
里親促進=直接的な少子化対策
ではありません。
ただし、あなたの2本の記事ではさらに、
中絶予定だった妊娠を、里親・養子縁組先を先に確保することで出生につなげられないか
と考えている。
ここまで行けば、理論上は出生数に作用します。
ただ、ここが一番難しい部分です。
「15万件の中絶から10万人を出生へ」は現実にはかなり難しい
2023年当時は年間約15万件でしたが、2024年度の人工妊娠中絶件数は12万7,992件まで減っています。
そして、この12.8万件をそのまま、
「産める子ども12.8万人」
とは扱えません。
理由はかなりあります。
母体の健康上の事情、胎児側の医学的事情、レイプなどの事情、生活状況、年齢、パートナーとの関係、出産そのものの身体的リスクなどがあるからです。
さらに、
「産んだら養子に出せます」
と制度を作ったからといって、中絶を選ぶ女性の大部分が出産に変更するとは考えにくい。
出産すること自体が、
妊娠を継続する9か月、仕事への影響、身体への負担、周囲への説明、出産リスク
を伴うからです。
ここは2023年案の最大の過大評価だったと思います。
15万人中10万人
という規模は、現実にはかなり非現実的でしょう。
逆に言えば、
年間1万人でも中絶を思いとどまり、本人が希望して出産できればかなり大きい
くらいに設定したほうが現実的です。
出生数67万人の時代なら、1万人でも約1.5%の上積みです。
これは小さくありません。
ただ、あなたの「増加分だけに金を使う」という思想はかなり重要
これはむしろ今の議論につながっています。
ひろゆき氏の1000万円案なら、
現在67万人産まれているところに、
政策がなくても産んだ67万人にも1000万円
を配ります。
単純計算で年間約6.7兆円です。
仮に政策によって出生が5万人増えたとしても、
72万人全員に1000万円=7.2兆円
必要です。
一方、
「この支援があるなら産みます」
という人だけに2000万円相当の支援をして5万人増やせるなら、
1兆円
です。
これこそ、あなたが現在考えている、
「政策反応性の高い層に集中する」
という思想です。
2023年の記事では、その対象を、
既婚女性の3人目
や
中絶を考えている妊婦
に設定していた。
現在はさらに、
「結婚できなくても、シングルマザーになってでも子どもを持ちたい女性」
へ広がっている。
こう見ると、考え方には一貫性があります。
本質はずっと、
少子化予算を全員に薄く配るのではなく、支援によって実際に出生行動が変わる人へ集中したほうがいい
という発想なんですよね。
私はこの部分はかなり評価できます。
むしろ2026年版なら「3つの高反応層」に分けるといい
今までの議論を全部合わせると、対象は3層になります。
① すでに2人いて、本当は3人目が欲しい夫婦
ここには、
住宅、教育費、保育、家事支援。
② 子どもは欲しいが、結婚やパートナーの問題で諦めている女性
ここには、
シングルマザーになった場合の所得・住宅・保育・家事育児支援という「保険」。
③ 妊娠しており、本当は産みたいが経済・養育上の理由で中絶を考えている女性
ここには、
経済支援、出産後の生活支援、本人が希望すれば特別養子縁組などの情報提供。
私は、この3層に集中する政策のほうが、全国民型1000万円より相当面白いと思います。
そして共通しているのは、
「子どもが欲しくない人を金で説得しない」
ことです。
すでに、
「できれば欲しい」
というところまで来ている人の最後の障壁だけを取る。
マーケティング風に言えば、
購入意思ゼロの人に広告を大量投下するのではなく、カートに商品を入れて決済直前で離脱している顧客を取り戻す
政策です。
少子化政策では、この発想はかなり重要だと思います。
一方で、里親は別枠にしたほうがいい
2023年の記事では、
3人目の実子 ≒ 3人目の里子
という形で税制優遇を同じように扱っています。
私はここは分離したほうがいいと思います。
なぜなら目的が違うからです。
実子3人目への支援は、
出生数を増やす政策。
里親支援は、
すでに生まれた要保護児童の生活環境を良くする政策。
養子縁組についても、
既に生まれている子なら人口は増えません。
中絶予定の妊娠を本人の自由意思で出生につなげる場合だけ、少子化政策との接点があります。
ですから、
「少子化対策」と「社会的養育政策」の二本立て
にしたほうが論理がきれいです。
人工子宮・遺伝子操作の部分は削ったほうがいい
2023年の記事にある、
人工子宮は実現可能
遺伝子操作で健康で知能の高い人間を生み出せる
という部分は、2026年の記事として残すなら大幅修正が必要です。
人工子宮研究は進んでいますが、人間を受精卵から出生まで完全に人工子宮で育てる技術が臨床実用化されたわけではありません。
まして、
「知能の高い子どもを遺伝子操作で作る」
ことは、現在の医療として実現していませんし、倫理的・法的にも非常に大きな問題があります。
この部分を少子化政策の根拠に使うのは避けたほうがいいです。
2023年案を今評価すると
私はこう採点します。
問題設定:8/10
「子育て支援だけではなく、結婚・母数・出生意思を見るべき」という視点はかなり良かった。
全員への現金ばらまき批判:8/10
今のOECD研究でも、現金給付だけの出生効果は小さいので方向性はかなり合っています。
3人目集中支援:6/10
可能性はある。ただし税制だけより、住宅・保育・時間支援まで組み合わせる必要があります。
里親促進:8/10(児童福祉政策として)
社会的意義は大きい。しかし少子化政策として数えるのは不適切。
中絶→出生へのマッチング:4/10
ごく一部には意味があるが、「15万→10万人」は現実離れしている。本人が「産みたいけれど経済的事情で中絶を考えている」場合に限定すべき。
「増加分・高反応層へ集中」という思想:9/10
私はここが、2本の記事から現在まで残すべき核心だと思います。
そして、2026年版として最も強くなるのは、
「既婚女性3人目案」だけではなく、「出生意思は強いのに最後の障壁で止まっている人を探し、その障壁に応じて集中支援する」
という一般原則へ昇華させることです。
これは、ひろゆき1000万円案、シンガポール、イスラエル、シングルマザー支援、養育費、不妊治療、住宅支援、保育政策まで、これまで考えてきた論点をかなり綺麗に統合できます。
終わりに
2023年に書いた2本の記事を現在から振り返ると、当時の案にはかなり荒削りな部分がありました。
特に、年間約15万件あった人工妊娠中絶のうち10万件程度を出生につなげられるのではないかという想定は、今考えると楽観的すぎます。
中絶には経済問題だけでなく、本人の意思、健康、家庭環境、妊娠・出産そのものの身体的負担など、さまざまな事情があります。里親や養子縁組先さえ用意すれば大量の出生につながるという単純な問題ではありません。
また、里親制度は基本的には少子化対策ではなく、すでに生まれている子どものための社会的養育政策です。
ここも分けて考える必要があります。
一方で、3年以上経った現在でも残った考えがあります。
それが、
「少子化予算を、政策によって出生行動が変わらない人にまで薄く広く配る必要があるのか?」
という疑問です。
子どもを欲しくない人を1000万円で説得するより、すでに「欲しい」と思っているのに、最後の一つか二つの障壁によって諦めている人を支援する。
すでに2人の子どもがいて、本当は3人目も欲しい夫婦なら、住宅・教育費・保育・家事負担を軽減する。
結婚相手がいなくても子どもを強く望んでいる女性なら、シングルマザーになった場合の経済・住宅・保育・家事育児負担というリスクを小さくする。
妊娠していて、本当は産みたいのに経済的事情などで断念しようとしている女性なら、その原因そのものを取り除く。
つまり、「全員に同じ1000万円」ではなく、「なぜ産みたいのに産めないのか」を特定し、その障壁に集中的にお金を使うのです。
マーケティングでいえば、商品に興味のない100万人に広告を打つのではなく、すでに商品をカートに入れ、あと一歩で購入するところまで来ている人に働きかけるようなものです。
少子化政策でも重要なのは、単純な支援額ではなく、「その支援によって実際に何人の出生が増えたのか」という費用対効果ではないでしょうか。
そう考えると、2023年に考えた「究極の少子化対策案」は、その具体策についてはかなり修正する必要があります。
しかし、その奥にあった、
「産む意思がすでに強い人に集中する」
という発想については、むしろ現在のほうが重要だと感じています。
シンガポールの大規模支援がこれからどの程度出生率を押し上げるのか。そして、日本では「薄く広く支援する政策」と「産みたい人に集中する政策」のどちらが、限られた予算からより多くの出生につながるのか。
少子化対策に本当に必要なのは、「いくら配ったか」を競うことではなく、「誰の、どの障壁を取り除けば、本当に子どもが生まれるのか」を見つけることなのだと思います。

