どうも。
「本屋はオワコン」
そんな言葉を聞く機会は、ここ数年で一気に増えた。
実際、数字を見ると、その見方を否定するのは難しい。
紙の雑誌市場は、1997年の1兆5644億円から2024年には4119億円まで落ち込み、実に74%減少した。
紙の書籍も最盛期の約半分まで縮小。
書店数も、2003年に1万3661店あった「坪あり書店」が、2025年には7458店まで減少している。
しかも書店という商売は、もともと利益率が極端に低い。
1000円の本を売って、書店に残る粗利は約220円。
キャッシュレス決済なら、そこからさらに2〜4%の手数料が削られる。
最低賃金が66円上がるだけで、アルバイト2人を1日8時間使う店では、毎日1000円以上コストが増える。
その穴埋めのためには、1000円の本を毎日5冊以上余分に売らなければならない。
しかし、今の時代に「毎日5冊増」を積み上げることがどれほど難しいかは、多くの書店員が肌感覚で理解しているだろう。
しかも書店は、価格競争すらできない。
出版業界には再販制度があり、本の値段は全国一律。
安売りも値上げも、書店側の自由にはならない。
つまり、
「利益率は低い」
「値段も自由に決められない」
「人件費と物流費だけは上がる」
という、かなり厳しい構造を抱えている。
さらに、日本の出版流通は「発売日を全国で揃える」という特殊な仕組みを維持している。
地方でも同じ日に雑誌やコミックを並べるため、東京を起点に、効率の悪い便まで維持しなければならない。
取次は、返品対応や金融機能まで抱え込みながら、赤字覚悟で物流を維持している。
もし大手取次が崩れれば、日本の出版流通そのものがクラッシュしかねない。
しかし、ここで重要なのは、著者が「だからもう無理だ」と言っていないことだ。
むしろ逆である。
著者は実際に本屋を経営しながら、この業界をどうすれば生き残らせられるかを、本気で考え、実際に動いている。
そこが、この話の最大の価値だ。
評論家のように外から批判するだけではなく、「現場で金を払い、人を動かし、制度を作り、試行錯誤している」のである。
たとえば著者は、物流危機に対して「本の地産地消」という発想を提示している。
現在は東京近郊に集中している印刷機能を、地方へ分散。
各地域で高品質なオンデマンド印刷を可能にし、その地域の本を、その地域で刷る。
これは単なる理想論ではない。
物流距離を短縮できれば、配送コストは下がる。
配送効率も改善する。
運送業界の負担軽減にもつながる。
出版不況を、「本業界だけの問題」として閉じない視点がある。
また、著者は「返品率改善だけでは業界は復活しない」とも語る。
もちろん返品率の高さは深刻だ。
書籍は3割前後、雑誌は半数近くが返品されている。
しかし、マイナスを減らすだけでは限界がある。
本当に必要なのは、「どうやって“プラス”を増やすか」だという。
その発想から出てきたのが、100人規模の作家イベント構想だ。
巨大会場で本のフェスを行い、街中の書店とも連動する。
1週間かけて作家が各書店を巡回し、サイン会やトークイベントを開催する。
つまり、「本を売る」だけではなく、「本を体験化する」という発想である。
これは単なる販売戦略ではない。
“本を読む文化”そのものを、エンタメとして再構築しようとしている。
さらに興味深いのが、著者が実際に取り組んでいる「ある画期的な書店経営モデル」だ。
詳細はぜひ 書店を守れ!を読んでほしいのだが、このモデルが非常におもしろい。
ポイントは、「本を売る利益だけに依存しない」ことである。
1000円の本を売って220円しか残らない世界で、従来型の発想だけでは限界がある。
ならば、書店空間そのものの価値を再定義し、地域企業・文化・人のつながりを巻き込みながら、新しい収益構造を作る。
しかもこれは、単なる机上の空論ではない。
著者は、
・契約問題
・法的リスク
・オンライン管理システム
・ブランド設計
・地方展開
・企業連携
まで含め、現実レベルで構築している。
ここが重要だ。
日本では、「理想論は語るが、実際に店を持ってやる人」が極端に少ない。
しかし著者は違う。
現場で赤字や物流や契約問題と向き合いながら、それでも突破口を探している。
さらに、図書館との対立構造についても、著者は「敵視」で終わらせない。
TRC問題や複本問題など、出版業界側の不満は理解しつつも、「じゃあどうやって共存するか」を考えている。
その延長線上にあるのが、「本の甲子園」という発想だ。
図書館員が地域作家を選び、書店がそれを売り、地域全体で盛り上げる。
これは単なる文学賞ではない。
地方文化の再編でもあり、地域経済と出版文化を接続する試みでもある。
著者は、書店の未来についてかなり冷静だ。
このままいけば、中規模書店は消える。
物流コストも上がる。
雑誌も減る。
出版社も減る。
作家も減る。
その未来予測は、おそらくかなり現実的だろう。
しかし、それでもなお、「どうすれば生き残れるのか」を考え続けている。
しかも、感情論ではなく、
データ
物流
金融
制度
契約
経営
地域構造
まで含めて考えている。
だから、この話は単なる「本好きの理想論」ではない。
むしろ、“極めて現実的な経営論”なのだ。
Amazonは便利だ。
翌日配送もある。
検索も強い。
価格比較も簡単だ。
消費者視点だけで言えば、リアル書店は負けている部分が多い。
それでも、人はなぜ本屋に行くのか。
そこには、「偶然の出会い」があるからだ。
そして、その偶然を、現実世界の空間として成立させ続けようとしている人たちがいる。
著者は、その最前線で戦っている一人だ。
「ある画期的な書店経営モデル」を知りたい方はぜひ以下の本を読んで欲しい。
このビジネスモデルは書店だけじゃなく、リアル店舗なら応用できるかもしれない。

