どうも。
AIブームが続く現在、多くの企業は「AIに乗り遅れるな」という空気の中で、巨額の投資を競うように進めている。
しかし、その流れとは対照的な企業がある。
それがアップルである。
一見すると、生成AI競争ではOpenAIやGoogle、Microsoft、Metaなどの影に隠れ、「出遅れている企業」とさえ見られてきた。
ところが市場は今、アップルを「AI競争の目立たない勝者」として評価し始めている。
私は以前、「せっかちさは知性の表れなのか」という記事を書いた。
そこでは、自分は「先延ばししている」のではなく、「期待値で動いている」のだという考え方を整理した。
実は、このアップルの戦略は、その考え方と非常によく似ている。
つまり、勝ち筋が見えない段階では、大きく資源を投下しない。
そして、期待値が十分高まった瞬間に、一気に動く。
これは個人だけではなく、世界最大級の企業にも共通する戦略なのである。
AIブームの中で、一社だけ違う動きをしたアップル
現在のAI競争では、
- Microsoft
- Google(Alphabet)
- Amazon
- Meta
といった企業が、AIインフラへ莫大な資金を投入している。
今年だけでも、この4社はAI関連設備に約7000億ドル(約114兆円)もの投資を計画している。
巨大なデータセンターを建設し、GPUを大量購入し、ギガワット級のAI学習環境を整備している。
まさに「AI軍拡競争」である。
一方、アップルはどうだったか。
今年の設備投資見通しは約140億ドル(約2兆2800億円)。
前年からほぼ横ばいであり、3月期にはむしろ減少している。
つまり、AIブームに流されていない。
「AIに乗り遅れた会社」ではなかった
アップルはAIを軽視しているわけではない。
むしろ、AIインフラを自社ですべて抱え込まないという判断をしている。
例えば、GoogleのGeminiなど、既存AI企業の技術をライセンス利用しながら、ユーザーへAI機能を届けようとしている。
つまり、巨額投資ではなく、必要な技術だけを利用する戦略なのである。
この姿勢は、一見すると消極的に見える。
しかし投資家は、「これは無駄な投資を避ける賢い判断ではないか」と考え始めている。
AI投資は、本当に全部回収できるのか
AIは非常に魅力的な市場である。
しかし、莫大な設備投資が、本当に将来回収できるのかは、まだ誰にも分からない。
実際、一部企業では、AI利用料の管理を始めている。
例えばテスラでは、従業員が利用するAIサービス費用に制限が設けられた。
従量課金型サービスが増え、AIコストが見え始めたからである。
つまり、AIは便利だが、思った以上にお金がかかるという現実が見え始めている。
私自身も「期待値」で動く
私は以前、自分は「先延ばし癖」があるように見えるが、実際にはそうではないと書いた。
私は、展望が見えるものには非常に速く動く。
例えば、
- 節約
- ダイエット
- 筋トレ
- セキュリティ
- メンタル改善
- コミュニケーション改善
などは、かなり行動してきた。
理由は単純である。
やれば成果が出る可能性が高いからだ。
一方、なかなか本格参入しなかったものもある。
例えば、
- ブログアフィリエイト
- Kindle出版
- LP制作
- コーダー
- 海外note
- ココナラ
などである。
周囲から見ると、「先延ばししている」ように見えたかもしれない。
しかし、私からすると違う。
勝ち筋が見えなかったのである。
LP制作を見送った理由
以前、LP制作を仕事にすることも検討した。
しかし、AIが文章を書き、デザインを作り、構成まで考える時代が来ると予想していた。
結果として、その予想はかなり当たった。
今ではAIだけで、かなり質の高いLPが作れる。
もし当時、全力でLP制作へ時間を投資していたら、今ほどリターンは得られなかった可能性がある。
つまり、動かなかったこと自体が正解だったのである。
アップルも同じことをしている
アップルも、AIそのものを否定しているわけではない。
しかし、まだ期待値が読みにくい段階では、巨額投資をしていない。
これは、私が考えている「期待値で動く」という考え方と非常によく似ている。
期待値が低い段階では、大きく資源を投入しない。
情報を集め、市場を観察し、勝率が見えた段階で動く。
これは、経済学でいう「オプション価値」にも近い。
選択肢を保持しながら、状況が有利になるまで待つのである。
DRAM不足でもアップルは強かった
今回、アップルが再評価された理由は、AIだけではない。
DRAM不足への対応でも、他社との差が見えた。
DRAM価格は、2026年第1四半期だけで約90〜95%も上昇。
さらに第2四半期も58〜63%上昇すると予測されている。
背景には、サムスン、SKハイニックス、マイクロンが、AIサーバー向け高帯域幅メモリー(HBM)の生産へ切り替え、一般向けDRAMが不足していることがある。
その結果、
- Microsoft Surface
- Xbox
- Dell
- HP
- Lenovo
なども値上げを行った。
アップルもMacやiPadを100〜300ドル値上げした。
しかし、値上げのタイミングは非常に慎重だった。
市場環境を見極め、顧客への影響を最小限に抑えながら実施したのである。
利益率という「体力」が違う
アップルには、利益率の高さという大きな武器もある。
売上総利益率は約48%。
前年の46.6%からさらに改善した。
背景には、
- 高利益率製品
- サービス事業
- エコシステム
がある。
例えば、
Mac利用者の多くは、
- iPhone
- iCloud
- iMessage
- AirDrop
などを長年利用している。
だから、200ドル程度の値上げなら、Windowsへ移行する人は少ない。
つまり、顧客が離れにくい。
これはアップル最大の強みである。
しかもiPhoneはまだ値上げしていない
さらに興味深いのは、アップル最大の売上である
iPhoneは、まだ値上げしていないことである。
もちろん、iPhone向けDRAM価格も上昇しているはずである。
しかし、アップルは、次期モデルのタイミングまで待っていると考えられている。
高価格モデルへの刷新と同時なら、値上げも受け入れられやすい。
ここでも、アップルは期待値が最も高いタイミングを待っている。
「速く動くこと」が正義ではない
AI時代になると、「まず動け」という言葉がますます増えている。
もちろん、それが正しい場面もある。
しかし、すべてに全力投資することが合理的とは限らない。
私自身も、展望が見えない分野では、無理に突っ込まない。
一方、YouTubeのように、月3万円程度なら現実的な可能性が見え始めたものには、現在かなり研究を進めている。
つまり、私は動かない人ではない。
期待値が高いと判断した瞬間に、一気に動く人なのである。
「小さく試し、大きく賭ける」
もちろん、期待値が見えるまで完全に待ち続けるだけでは、機会損失も生まれる。
だから重要なのは、最初から全力投資することではなく、小さく試すことである。
例えば、
- 低コストで実験する
- データを集める
- 市場の反応を見る
- AIの進化を観察する
- 勝率を更新する
こうして期待値が高まった段階で、本格的に資源を投入する。
この考え方は、アップルにも、個人にも共通する。
他者評価より、自分の羅針盤を持つ
こうした判断をする上で重要なのは、他者評価を絶対視しないことである。
歴史を振り返れば、当初は間違いだと否定されながら、後になって正しかったと証明された例は少なくない。「それでも地球は回る」と語られる地動説や、かつて陰謀論として一蹴されながら後に事実と判明した出来事も、その一例である。他者の評価は、時代や常識によって覆ることがある。
だからこそ、他人の評価に過度に依存するのではなく、自分自身の価値判断の「羅針盤」を育てることが重要だ。
もちろん、自分の専門外では、専門家や権威を参考にすることは合理的である。しかし、それに全面的に依存するのではなく、できるだけ自分の頭で考え、自分なりの判断基準を持つことが、AI時代にはこれまで以上に重要になる。
終わりに──せっかちさとは、「期待値に敏感」であること
私は今でも、無意味な待ち時間が嫌いである。
進展しない議論も苦手だ。勝ち筋のない努力には耐えられない。
だから、せっかちに見える。
しかし、それは単に我慢が足りないからではない。
問題を早く解決したいという知的欲求であり、限られた時間や資源を無駄にしたくないというリソース感覚であり、勝ち筋のない場所に人生を浪費したくないという本能でもある。
アップルもまた、AIブームに流されることなく、期待値を見極めながら資源を配分している。
その姿は、「速く動くこと」が必ずしも最善ではないことを示している。
AI時代に本当に重要なのは、ただ急ぐことではない。
期待値を更新し続けること。
小さく試し、速く学び、速く損切りし、勝ち筋が見えたら一気に動くこと。
個人にも企業にも共通するこの姿勢こそが、不確実性の高い時代を生き抜くための、最も合理的な戦略なのではないだろうか。

追加記事:Appleは「先を読んで動かなかった」のか、それとも「動く必要がなかった」のか
ここで、一つ別の視点も考えてみたい。
私は先ほど、アップルのAI戦略は「期待値が十分に高まるまで大きく動かない」という合理的な戦略に見えると書いた。
しかし、本当にそうなのだろうか。
もしかすると、アップルはAI市場を先読みして慎重に動かなかったのではなく、そもそも積極的に動く必要がなかっただけなのかもしれない。
かつてのアップルは、iPhoneやiPadなど、市場そのものを作り出す革新的な企業だった。しかし現在は、良くも悪くも成熟企業である。
売上総利益率は約48%と極めて高く、世界有数の強固な経営基盤を持つ。さらに、iPhone、Mac、Apple Watch、AirPods、iCloudなどを組み合わせた巨大なエコシステムによって、多くのユーザーを囲い込んでいる。
そのため、他社のようにAIブームへ巨額投資を行ってまで、新たな収益源を急いで作る必要性は小さかったとも考えられる。
言い換えれば、アップルは「期待値を読んだから動かなかった」のではなく、「利益率が高く、無理をして動く必要がなかった保守的な企業」になったという見方もできる。
結果として、AIインフラへの過剰投資競争に巻き込まれずに済み、それが現在では「賢い判断だった」と市場から評価されている。不幸中の幸いと言える側面もあるだろう。
つまり、アップルの成功をそのまま「先見性」の証拠と断定するのは早計であり、「動かなかったことが結果的に正解だった」という可能性も忘れてはならない。
iPhone離れは本当に起きるのか
一方で、アップルの強みも永遠ではない。
私自身は現在、iPhoneにそれほど魅力を感じておらず、利用も限定的である。しかし世界を見渡せば、熱心なiPhoneユーザーは非常に多い。
その理由は、単に性能だけでは説明できない。
長年使ってきた
- iCloud
- iMessage
- AirDrop
- AirPods
- Apple Watch
などとの連携が非常に強く、一度Appleのエコシステムへ入ると、他社へ乗り換えるコストが高くなる。技術的な優位性だけではなく、「スイッチングコスト」が大きな競争力になっているのである。
だからこそ、多少の値上げであれば、多くのユーザーは受け入れるだろう。
しかし、その囲い込みにも限界はある。
近年は新品だけでなく中古iPhoneも値上がり傾向にあり、今後さらに価格が上昇すれば、「さすがに高すぎる」と感じるユーザーが増える可能性は十分考えられる。
中古市場の再編がiPhone価格を押し上げる可能性
実際、中古市場では大きな変化が起きている。
中古スマートフォン・PC販売で知られるイオシスは、2026年7月に丸紅の完全子会社となった。
また、ブックオフグループホールディングスも伊藤忠商事と資本業務提携を結び、リユース市場の拡大を進めている。
さらに、伊藤忠グループのBelongが運営する「にこスマ」では、Apple製品の価格改定前後で販売台数が16%増え、平均購入単価も14%上昇したという。
新品価格の上昇が、中古市場にも波及しているのである。
こうした商社資本の参入によって中古市場の流通効率は向上するかもしれない。しかし一方で、市場の成熟が進めば、「掘り出し物」を見つける機会は減っていく可能性もある。
メルカリで安価な良品iPhoneを探す戦略は、今後ますます難しくなるかもしれない。
私がiPhone依存をやめた理由
私がiPhone 12 miniを使い続けてきた最大の理由は、
- セキュリティ更新の速さ
- セキュリティアップデート期間の長さ
この2点だった。
しかし、それ以外では不満も多かった。
- 中古でも価格が高い
- バッテリー持ちが弱い
- バッテリー交換費用がかかる
- 同価格帯のAndroidと比べると性能面で割高に感じる
さらに、iPhone 12 miniも今後はアップデート対象から外れる可能性があり、長期運用への不安もある。
そこで私は端末構成を全面的に見直した。
現在の外出用構成は、
- Pixel 7a(GrapheneOS)
- Galaxy A25 5G
- Redmi Pad SE 8.7
- モバイルWi-Fi(Aterm MP02LN)
というAndroid中心の構成である。
自宅では、
- Galaxy A25 5G
- Redmi Pad SE 8.7
- POCO M7 Pro 5G
- Redmi 12 5G(風呂用)
と用途ごとに役割を完全に分離している。
LINEやメルカリなどもGalaxy A25へ移行し、iPhone 12 miniは「iPhoneでしか確認できない用途」のための保守端末という位置付けになった。
つまり、私の中では主役はすでにAndroidへ移っている。
保守は悪ではない
もっとも、「保守的」であること自体が悪いわけではない。
成熟企業は、むやみに流行へ飛び付くよりも、利益率を維持しながら、勝てるタイミングを見極めることが株主利益につながる場合も多い。
個人も企業も、「とにかく早く動く」ことだけが正解ではない。
重要なのは、自分の資源をどこへ投じるべきかを見極めることである。
その意味では、アップルはAI競争の勝者というより、「動かなかったことが結果として評価された企業」と言ったほうが、現時点では実態に近いのかもしれない。

