どうも。
少子化対策というと、児童手当、教育費の無償化、保育料の補助、婚活支援など、「お金を配る」「結婚を増やす」という政策が中心になりがちです。
もちろん、そうした政策も必要です。
ただ、僕はそれだけでは足りないと思っています。
なぜなら、子どもを産むことへの不安は、単に「お金がかかるから」ではないからです。
結婚生活がうまくいかなくなったらどうするのか。離婚したらどうするのか。
養育費が払われなかったらどうするのか。
仕事をしながら、一人で家事も育児も学校対応も行政手続きも全部こなせるのか。
病気になったら誰が助けてくれるのか。
つまり、子どもを持つことには、将来何が起きるか分からないという巨大な不確実性があります。
そこで僕が考えたのが、今回の「子育てレスキュー」構想です。
発想はかなり単純です。
子どものいるシングルマザーが生活や育児で困ったとき、Uber Eatsを呼ぶような感覚で、スマホから支援員を呼べるようにする。
そして利用費の一部を行政がポイントとして負担する。
家事、買い物、子どもの送迎、学習支援、行政手続きの補助など、家庭の中で不足している労働力を必要な時間だけ外から投入するわけです。
ただし、制度を手厚くすると、
「離婚した方が支援を受けられて得なのではないか」
というモラルハザードも生まれます。
そこで今回の案では、予算を考えてまず子どものいるシングルマザーに限定して実験する一方、別れた親の養育責任についてはむしろ厳格化するというセットで考えます。
子どもを育てる側は助ける。
しかし、子どもを作った側が簡単に責任から逃げることは許さない。
今回は、この「子育てレスキュー」を一つの具体的な少子化・子育て政策としてまとめてみます。
1 シングルマザーに足りないのは「お金」だけではない
ひとり親支援というと、まず所得の問題が出てきます。
もちろん、お金は重要です。
しかし、もう一つ極めて重要なのが、時間と人手です。
たとえば仕事を終えて帰宅したシングルマザーがいたとします。
そこから、夕食を作る。洗濯をする。掃除をする。子どもの宿題を見る。明日の準備をする。
買い物へ行く。病院へ連れていく。学校から来た書類を確認する。役所関係の手続きをする。
こうした仕事が全部残っています。
ここで1万円を渡しても、1日は24時間のままです。
しかし、誰かが2時間だけ家事をしてくれれば、本人にはその2時間が戻ってきます。
つまり、子育て支援には、
お金を給付する政策だけではなく、時間を給付する政策
があってもいい。
これが「子育てレスキュー」の中心思想です。
2 Uber Eatsのように「支援員」を呼ぶ
イメージはシンプルです。
シングルマザーがスマホでアプリを開きます。
画面には、
「今日、何に困っていますか?」
と表示されます。
たとえば、
- 掃除をしてほしい
- 買い物に行ってほしい
- 子どもの送迎をお願いしたい
- 宿題を見てほしい
- パソコンやスマホの設定を手伝ってほしい
- 行政手続きが分からない
- 子どもを少し見ていてほしい
などを選ぶ。
すると、近隣で対応可能な支援員が表示されます。
料金、対応可能時間、評価、得意分野などを見て予約する。
支援員が訪問し、必要な仕事をする。
つまり、これまでなら配偶者や親族が無償で担っていた役割の一部を、必要なときだけ外部から調達できるようにするわけです。
3 誰が支援員になるのか
全員を公務員として雇えば、予算が膨大になります。
そこで、民間のマッチング方式を取り入れます。
世の中には、子育てが終わった人。短時間なら働ける人。定年後で時間のある人。
副業したい会社員。家事だけ得意な人。PCやスマホだけ詳しい人。
勉強を教えられる大学生。など、たくさんの人がいます。
たとえば、
「平日の午後だけ、掃除と買い物ならできます」
でもいい。
「土日の午前中、子どもの勉強を見られます」
でもいい。
「スマホ設定ならできます」
でもいい。
重要なのは、万能な支援員を作ることではありません。
自分ができる小さな仕事だけを登録して働けるようにする。
これなら参加者の母数を増やせます。
4 ただし、何でもUber化すればいいわけではない
当然ですが、子どもが関わるため安全性は非常に重要です。
そこで支援内容を危険度によって分けます。
たとえば、
レベル1 低リスク
掃除、買い物、荷物運び、簡単な家事。
レベル2 中リスク
学習支援、子どもの送迎、短時間の見守り。
レベル3 高リスク
乳幼児の保育、長時間預かり、病児対応。
医療、法律、心理問題については、一般支援員ではなく専門家へつなぐ。
支援員側にも、本人確認、研修、保険、利用履歴、評価制度などを導入します。
つまり、
市場原理は使うが、安全性は市場任せにしない。
ここは行政がルールを作る必要があります。
5 政府は「子育てレスキューポイント」を配る
完全自費では、最も困っている家庭ほど使えません。
そこで子どものいるシングルマザーに、毎月一定額の子育てレスキューポイントを付与します。
たとえば仮に月1万~2万円相当。
実際の金額は社会実験で調整すればいいでしょう。
このポイントは現金化できず、子育てレスキューの認定サービスにしか使えません。
たとえば、家事支援。送迎。学習支援。買い物。
短時間の見守り。行政手続き補助。
などです。
ポイント分までは公費。
それ以上使いたい場合は自腹。
こうすれば、
最低限は社会保障、それ以上は市場
という組み合わせができます。
6 僕なら「3階建て」にする
すべてを有料サービスで解決する必要もありません。
僕なら3階建てにします。
第1層 子持ちシングルマザー・コミュニティ
ここでは無料で情報交換します。
「この制度は使える?」「この書類はどう書く?」「この地域の保育園はどう?」
といった質問なら、経験者同士で解決できる可能性があります。
掲示板形式でもいいでしょう。
(ここは僕の節約術などのコンテンツが活きます。僕の節約術などは合成の誤謬問題があり、一部(シングルマザーなど)が知っていて使う分には全体に影響せず、効果があり、生きやすくなるわけで、それをシングルマザーには開放します。もちろん、この情報を使って利用するかは本人次第です。生活保護層には教えず、なぜならモラルハザードが生じるからです)
第2層 公的子育てレスキュー
無料相談では解決できない問題について、行政ポイントを使って支援員を呼びます。
ここが最低保障です。
第3層 民間子育てレスキュー
さらにサービスが必要なら、政府認定の民間マッチングサービスを利用する。
行政ポイントも使える。超過分だけ自費。
そして複数の民間企業を競争させる。
これなら、
無料の相互扶助→公的保障→民間市場
という順番になります。
7 AIを総合受付に使う
もう一つ重要なのがAIです。
行政サービスの問題は、制度そのもの以上に、
どこに相談すればいいのか分からない
という点です。
そこでアプリにAI相談窓口を入れます。
たとえば、
「子どもが最近学校に行きたがらず、仕事もあるので困っています」
と入力する。
AIが話を整理して、学校相談。不登校支援。見守りサービス。
心理相談。利用できる行政制度。
などを提示する。
AIが専門家の代わりを全部する必要はありません。
問題を適切な人・制度へ振り分ける案内役として使う。
これはかなり現実的だと思います。
8 民間企業同士を競争させる
行政が一つの巨大アプリを作って全部運営する必要もありません。
政府や自治体が安全基準とポイント制度を作り、
A社。B社。C社。
のように、複数の民間事業者を認定する。
利用者は、料金。評価。予約の取りやすさ。サービス内容。
などを比較して選ぶ。
すると事業者側は、価格を下げる。使いやすくする。良い支援員を集める。
という競争をします。
行政は、
ルール、安全性、最低保障。
民間は、
利便性、価格競争、サービス開発。
という役割分担です。
9 この案のポイントは「すでにある制度を一つの入口にまとめること」
実は、日本にはすでに似た制度があります。
子育てを手伝いたい人と助けてほしい人を結ぶ制度。
ひとり親家庭への家事・育児支援。
家庭訪問型の子育て支援。
民間のベビーシッター。家事代行。
などです。
問題は、それらがバラバラに存在していることです。
利用者側からすると、
「自分はどれを使えるの?」「どこに電話するの?」
「これは所得制限がある?」「今日来てくれる人はいる?」
と調べなければいけない。
しかし、最も疲れている人ほど、その検索すらきつい。
そこで、
入口だけ一つにする。
アプリで、
「困っています」
と入力する。
あとはシステム側が、無料コミュニティ。公的サービス。
民間サービス。専門家。
へ振り分ける。
これだけでも、かなり便利になるはずです。
10 これは「現金給付」ではなく「時間給付」である
子育てレスキューの最大の特徴の一つはここです。
現金2万円を配れば、2万円増えます。
しかし2万円分の家事支援を使えば、
親の時間が増える。
仮に月10時間の支援を受けられれば、年間120時間。
5日分に相当します。
その時間で、
休む。子どもと遊ぶ。働く。勉強する。転職準備をする。
何をしてもいい。
つまり、
お金だけではなく、人生の時間そのものを返す政策
になります。
11 シングルマザーの就業にも効果が期待できる
ひとり親が安定した仕事を続けるには、毎日の小さなトラブルがかなり邪魔になります。
子どもの送迎。学校対応。買い物。家事。病院。
そうした問題で休みが増えれば、仕事を続けにくい。
そこで支援員を投入できれば、
仕事を休まずに済む。
残業しなくても生活が回る。
資格勉強をする余裕ができる。
といったことが起こる可能性があります。
つまり、子育てレスキューは福祉だけではなく、
就労支援政策
でもあります。
12 子どもにもメリットがある
親が疲れ切っていれば、その影響は子どもにも及びます。
逆に、親に余裕ができれば、
話を聞く時間が増える。
食事が安定する。部屋が片付く。宿題を見てもらえる。
学校や医療サービスにつながりやすくなる。
可能性があります。
だからこの制度は、
母親支援だけではなく、子どもの生活環境への投資
でもあります。
13 なぜこれが少子化対策になるのか
一番重要なのはここです。
この制度ができたからといって、
「支援員が来るなら子どもを産もう!」
と急に出生数が増えるとは思いません。
そんな単純な話ではありません。
しかし、
「もし夫婦関係が壊れても、一人ですべて背負うわけではない」
「もし養育費の問題が起きても、一定の社会支援がある」
「ひとり親になっても生活は回せる」
という安心感は生まれます。
つまり、子どもを持つことの最悪ケースが少しマシになる。
少子化対策としては、
子どもを産むリターンを上げる政策ではなく、子どもを産むリスクを下げる政策
です。
14 ただし、この制度には大きなモラルハザードがある
ここは避けて通れません。
子持ちシングルマザーへの支援を手厚くすると、
「結婚しているより離婚した方が得なのでは?」
という問題が出ます。
ただし、予算を考えれば最初から全家庭へ広げるのは現実的ではありません。
だから僕は、まずは子どものいるシングルマザー限定でいいと思います。
その代わり、モラルハザードについては、支援対象を広げるのではなく、
養育責任を厳格に追跡する
ことで対応します。
15 養育費未払いを放置しない
最も避けたいのは、
子どもをもうける。離婚する。養育費を払わない。
そのまま別の相手と再婚する。
という行動です。
これを繰り返せるなら、社会支援のコストを他人へ押しつけることができます。
だから離婚後は、養育費の金額。支払期限。支払状況。未払い。免除や減額について正式な合意があるか。
などを行政側で記録します。
そして、
養育費履行状況証明
のようなものを作る。
たとえば、
「履行中」「一部未払いあり」「長期未払い」「当事者合意で免除・変更」
などです。
16 再婚市場にも養育責任の情報を反映する
これは重要だと思います。
離婚経験そのものは問題ではありません。
離婚にはいろいろな事情があります。
しかし、
前の子どもへの養育責任を果たしているか
は、再婚相手にとってかなり重要な情報です。
そこで結婚相談所や婚活サービスなどで、本人同意のもとで養育費履行状況証明を提出できるようにする。
養育費をきちんと払っている人なら、
「離婚しても親としての責任は果たしている」
という証明になります。
逆に、長期間払っていないなら、大きな警戒材料になる。
こうすれば、
養育費を払わないことに社会的コスト
が生まれます。
再婚したいなら、養育責任を果たさなければいけない。
これはかなり強いインセンティブになります。
17 「子どもは助ける。でも親の責任は消さない」
ここは制度設計の中心です。
社会が子どもを助ける。
だからといって、
「別れた親は何もしなくていい」
にはしない。
子どもの生活が困っているなら、まず支援する。
しかし本来養育費を払うべき親に支払い能力があるなら、そちらにも責任を負わせる。
つまり、
子どもへの支援と親への責任追及を同時に行う。
これがなければ、「子育てレスキュー」はフリーライダーを生む危険があります。
18 「離婚を増やす制度」ではなく、「最悪の離婚を減らす制度」
この制度によって、逆に離婚が増える可能性はあります。
たとえば、
経済的に離れられないからモラハラやDVに耐えていた女性が、
「シングルマザーでも生活できる」
と分かれば、離婚するかもしれません。
それ自体を政策失敗と見る必要はないと思います。
大事なのは、
離婚件数ではなく、親と子どもの生活が改善したか
です。
「離婚させないこと」が目的ではありません。
「離婚した結果、親子が極端な貧困や孤立に落ちることを防ぐ」
のが目的です。
19 最初は東京都などで小規模実験すればいい
いきなり全国導入する必要はありません。
東京都や大都市圏など、利用者も支援員候補も多い場所で実験する。
たとえば1万人程度。
そこで、利用率。1家庭あたりの支援コスト。支援員の供給量。親の就業継続率。
所得。自由時間。精神的負担。子どもの生活状況。養育費支払い率。サービス満足度。
などを調べる。
さらに、
「もう一人子どもを持ちたいと思うか」
という意識変化まで追えばいい。
20 少子化に効かなくても政策価値はある
これはかなり重要です。
仮に出生数への影響がゼロだったとします。
それでも、
シングルマザーの所得が上がる。
就業が安定する。自由時間が増える。親の疲労が減る。
子どもの生活が改善する。養育費未払いが減る。
ならば、政策としてかなり価値があります。
つまり、
少子化に効かなければ全部無駄になる賭けではない。
まず現在いる親と子どもを助ける。
その結果として、
「これなら子どもを持っても何とかなる」
と思う人が増えるかを調べる。
この順番でいいと思います。
終わりに――「産めば得」ではなく、「産んでも詰まない」社会へ
少子化問題について考えると、
「結婚する人を増やそう」
「子どもを産んだらお金を配ろう」
という話になりがちです。
しかし僕は、その前にもっと重要な問題があると思っています。
子どもを持った後、何か起きたときに人生が詰む可能性が高すぎることです。
離婚した。養育費が来ない。仕事もしなければならない。
子どもの世話もある。親族も頼れない。家事も全部自分。
そうなったとき、
「自分で全部何とかしてください」
では、子どもを持つこと自体が怖くなるのは当然です。
そこで、
困ったらアプリを開く。家事を頼む。送迎を頼む。
勉強を見てもらう。買い物を頼む。行政手続きを手伝ってもらう。
必要なら専門家につないでもらう。最低限の支援は行政ポイントで保証する。
さらに使いたければ自費で利用する。
支援する側には副業や短時間就労が生まれる。
そして、別れた親については養育費を徹底的に追跡し、責任逃れを許さない。
つまり、
育てている側は助ける。
逃げる側には責任を取らせる。
この2つをセットにする。
僕が考える「子育てレスキュー」は、単なるシングルマザー優遇政策ではありません。
子どもを育てる家庭へ、必要な瞬間だけ人手を送り込む新しい生活インフラです。
現金を配るだけではなく、時間を返す。
家族だけで全部背負わせない。
しかし親としての責任まで社会へ丸投げさせない。
そして最終的には、
「子どもを産めば得する社会」ではなく、「子どもを産んだ後、何か起きても人生が破綻しにくい社会」
を作る。
その安心感が広がれば、少子化への副次的な効果も期待できるかもしれません。
もちろん、本当に効果があるかは実験してみなければ分かりません。
だからこそ、小さく始めて、数字で確かめる。
親の生活は楽になったか。子どもは安定したか。
費用対効果は高いか。養育費未払いは減ったか。
そして、子どもを持つことへの不安は下がったか。
そこまで検証して、効果があれば拡大する。
それが僕の提案する「子育てレスキュー」です。
この案が生まれた背景や理論的バックボーンについては別記事で紹介しています。

